施設長の学び!

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『自由からの逃走』

『自由からの逃走』

 食べたい物を食べる自由、行きたい所に行く自由、言いたいことを言う自由、「こう生きていきたい」と願って努力する自由…。
 私たち福祉専門職の仕事には、さまざまな自由を手助けする側面があります。

 ですが、「何でもできる」という自由には、「実際はできないことばかり」「やるべきことを誰も教えてくれない」「自己責任で選ぶことは避けたい」などのネガティブな“成分”も含まれています。
 自由の陰にひそむ、このような無力感や孤独感を指摘しているのが本書です。


 著者のエーリッヒ・フロムは、ユダヤ系ドイツ人の心理学者。第二次世界大戦時、ヨーロッパにおいてドイツ国民がナチズムに傾倒していく状況を受け、中世の封建制度が崩壊しても、なお服従や隷属を求めてしまうメカニズムを考察しています。

 中世社会を特徴づけるものに「個人的自由の欠如」がありました。貴族に生まれた者は貴族に、職人に生まれた者は職人に、農民に生まれた者は農民になるしかなかった時代。それでも、生来の役割を果たす者には、社会の成員としての安定感や帰属感がもたらされていました。

 やがて資本主義・民主主義の社会が到来。人びとは伝統的な束縛から解放されます。
 そこに待っていたのは、自由であるがゆえに個々人の意志や責任感、価値観が試される社会。何でもできるはずなのに、何でもできる訳ではない…そんな無力感や孤独感と向き合わなければならない社会でした。

 このような自由に耐えられない人びとは、権威主義や破壊性、機械的画一性に逃避したそうです。
 権威主義とは、組織や権力など強大なものに自己をゆだねること。破壊性とは、自己や他者を攻撃すること。機械的画一性とは、社会が求める役割に自己を埋没させること。…近代史をながめれば、これらの事例は無数に存在していますね。

 著者は「人間が積極的に社会過程に参加する」ことで、無力感や孤独感を克服できると説いています。
 「何でもできる訳ではない」と自覚しつつ、できることを少しずつ拡げていく努力。自由への手助けをする上でも、忘れてはならないでしょう。

photo credit: stuant63 via photo pin cc