『アスペルガー流 人間関係』 | 施設長の学び!

『アスペルガー流 人間関係』

『アスペルガー流 人間関係』
 当事者たちは日々、何を考え、何を思っているのか…それを理解するには、当事者の話に耳を傾けるのが一番でしょう。
 とは言え、理解を深めるためには、適切に言語化されていることが前提となりそうですが。

 本書は、アスペルガー症候群(AS)の13人と、ASの家族1人が、自分たちの体験などをつづった文集です。
 自閉症スペクトラムに属し、知的障害を伴わないとされるAS。彼らによる明晰な文章を通して、当事者の内面に触れることができます。


 ASと診断される前、無自覚だった時期に経験したという、失敗や挫折。
 ASとの自覚を踏まえ、平穏な社会生活を維持するために行なってきた、努力や工夫。
 多数派である定型発達者(NT)に囲まれ、ASとして生きていかねばならないことへの、諦念や覚悟。

 経験の“質”は個々に異なりますし、中にはユーモアを交えて軽妙につづっている人もいます。
 ですが、それぞれの文章の裏には、程度の差こそあれ、上記の「失敗や挫折」「努力や工夫」「諦念や覚悟」が塗り込まれているように思えました。

 私は以前、聴覚障害者の会合に参加したことがあります。
 手話で静かに交流する人々の中、どのような会話が行なわれているのか分からず、自分の意思を表明することもできず、何とも居心地が悪かった…あの体験は、NTの社会で生きるASの状況に、どこか似ていたような気がします。

 一方で、私は本書の内容に共感を覚えてもいました。読みながら、多くの箇所について「私もそうだ」「これは自分にもある」などと思えたのです。

 自閉症はスペクトラムとして捉えられ、NTとの境界には広いグレーゾーンが横たわっています。NTに属する全員が“真っ白”という訳ではなく、多くの人々には大なり小なり自閉症的な性質が備わっています。
 “自分の中にあるAS”を実感させてくれた一冊でもありました。

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