『ソーシャルロールバロリゼーション入門』 | 施設長の学び!

『ソーシャルロールバロリゼーション入門』

『ソーシャルロールバロリゼーション入門』
 現代の福祉において、基盤とされる考え方のひとつ「ノーマライゼーション」。おおむね「障害のある人でも地域で普通に暮らせるよう、環境整備を進めること」を指すようです。
 しかし、北欧発のノーマライゼーションが国際社会へ拡がるにつれ、「“普通”への同調を、逸脱している人びとに対して過度に求めるものでは?」との疑問・批判が出てきたそうです。

 これを受けて生まれたのが「ソーシャルロールバロリゼーション」。しばしば「社会的役割の獲得(実践)」などと訳されますが、バロリゼーションには「テコ入れ」の意味もあるようです。


 著者のW・ウルフェンスバーガーは、アメリカにおいてノーマライゼーションを理論化・体系化させた人物。ソーシャルロールバロリゼーションの提唱者でもあります。

 著者の定義によると、ソーシャルロールバロリゼーションとは「可能なかぎり文化的に価値のある手段による、人々、ことに価値の危機に瀕している者たちのために、価値ある社会的な役割の可能化、確立、増進、維持、ないし防衛」。
 本書を読んだうえで言い換えれば、「不当に低く扱われている人々の、社会的な役割を高めるために、適応力とイメージを増進させること」でしょうか。
 ノーマライゼーションを理念的な目標とするならば、ソーシャルロールバロリゼーションは手段に相当するようです。

 具体的な方策として挙げられているのは、奇異な言動を改めたり、髪型や服装を整えることなど。
 そこだけを見れば、「“普通”への同調を求めているではないか」と反発したくなるかも知れません。

 ですが、本書を通読するうち、挙げられている数々の方策は、障害のある人たちの価値を引き下げる、社会の価値観への働きかけらしいと気付かされました。押し付けられる“期待”に対し、応えたり、裏切ったり、上回って見せたり…ある種の“イメージ戦略”と言えそうです。

 障害のある人たちが「普通と違う」「異常である」と見なされる場合、そこには「あれは普通」「これが異常」と規定する価値観が作用しています。
 障害のある人を変えるのではなく、社会の価値観を変える。障害者が有する価値を、社会に認めさせ、高めていく。…ソーシャルロールバロリゼーションの狙いは、そのあたりにあるようです。
 私にはそう読み取れました。

 ウチの施設では、授産活動としてのゴミ収集や公園清掃などは行なっていません。
 ソーシャルロールバロリゼーション的に見れば、ゴミや汚れに関わる活動は、障害者のイメージを引き下げやすいため、今後も手を出すべきではないという判断ができそうです。
 ところが、さらにソーシャルロールバロリゼーション的な考えを深めると、ディズニーランドの清掃スタッフのように、みんなでスタイリッシュな制服や道具をそろえ、堂々と働いて見せるというアグレッシブな方法も浮かんでくるのです。

photo credit: Princesse Black – Aout 2013 via photopin (license)