壮大な宇宙戦争に突入 『航空宇宙軍史・完全版』(三~五)

 谷甲州による大河SFシリーズの総集編。残る3冊を一気読み。

 太陽系内を舞台にした、工学系やミリタリー系の緻密な描写が光る、堅実で渋い未来戦史…みたいな前半2冊の印象が、大きくくつがえされてしまう。

 収録作品の中では、航空宇宙軍とテロ組織のスリリングな謀略合戦『エリヌス-戒厳令』が“前半らしさ”を強く感じさせて面白かったんだけど、このシリーズ全体の舞台は、実は太陽系よりもずっと広大。
 航空宇宙軍は初期の外宇宙探査で“真の敵”を見出しており、外惑星連合との間で起きた外惑星動乱は、未来の戦いへの“肩慣らし”だったという、オドロキの真相が。やがて人類は、予期されてた汎銀河世界と遭遇し、壮大な宇宙戦争に突入する。

 本作では宇宙船は光速を超えないタテマエなので、恒星間の艦隊戦は会敵までに何年も何十年もかかる大遠征になり、その間に母星で技術革新が進み、味方の新鋭艦が後方から高速で加勢にきたりするのが面白い。
 時空を超えた“輪廻転生”みたいな道具立てもあって、著者によるSF的な解釈がまた、イメージするのは難しいんだけど何とも興味深い。

 それにしても、航空宇宙軍の艦艇は亜光速で航行するので、乗員はウラシマ効果のせいで何百年も勤務することになる。戦死しても、経験豊富な将官クラスなら貴重な人的資源なので、サイボーグとして蘇生させられ、いつまでもコキ使われる。
 職場としてはブラックの極みだなw

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