小説

天竺堂の本棚

“発展”の是非 読み手に問いかける 『言の葉の樹』

ル=グウィンの長編SF。  宇宙連合エクーメンがもたらす文明を受け入れた、惑星アカが舞台。 アカの支配勢力は、産業や経済を飛躍的に発展させる半面、それまでの文化を全否定しようとしてた。徹底的な焚書。 ... 【続きを読む】
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カノジョさえいれば 夢想抱く探偵 『IQ2』

無差別殺傷事件を起こした男が、犯行前にネットで「彼女さえいればこんな惨めに生きなくていいのに」なんてつぶやいてたそうな。 カノジョができたら、どんなオトコでもハッピーになれるのか?  ハッピーになれる... 【続きを読む】
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創設からの歩み さまざまな視点で 『夢見る帝国図書館』

国立国会図書館の前身とされる帝国図書館を題材にした、ちょっとユニークな小説。  人物パートと図書館パートが交互につづられる。 前者は、主人公の女性ライターが偶然出会った、天真爛漫な老女・喜和子さんをめ... 【続きを読む】
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異なる自分を生きる 複雑怪奇なミステリ 『イヴリン嬢は七回殺される』

今この文章を書いてる自分と、昨日の自分や、一昨日の自分って、同一人物なのだろうか?   どれも自分なんだから、同じでアタリマエ。 と思いがちだが、改めて考えてみれば、今の自分と過去の自分では、経験とか... 【続きを読む】
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風変わりで魅力的 LAの無許可探偵 『IQ』

ロサンゼルスに住むアフリカ系アメリカ人。20代半ば。無許可の探偵。 明敏な知性、鋭い観察眼、大胆な度胸と行動力、奇妙なボランタリー精神の持ち主。銃器は嫌いだが、知識は豊富。地元の地理、犯罪組織の事情、... 【続きを読む】
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イタい男女の言動 巧みに描く中編集 『木に登る王』

スティーブン・ミルハウザーの中編集。 全3話いずれも、男女の愛憎っつーか、浮気に絡んだ三角・四角関係の物語。  ニンゲンは愚かで弱いから、惨めな自分に真正面から向き合うなんて、そうそうできはしない。 ... 【続きを読む】
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理不尽と苦悩 乗り越えた家族 『重力ピエロ』

本書の主人公には、特殊な弟がいる。  ちなみに私にも、特殊な弟がいる。 私の弟はダウン症。偶発的な染色体異常で、700分の1ほどの確率で発症するらしい。ダウン症は知的障害などを伴うため、クジなら“ハズ... 【続きを読む】
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遠大すぎるロマン SF大作の開幕編 『三体』

ノーベル賞を受賞した日本の科学者たちは、みんな口ぐちに基礎研究の大切さを力説してる。 ネットの端々で「今日のコンピューターは今より1世紀ほど前に行われた数学の基礎研究なしには成立し得ないが、当時はその... 【続きを読む】
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些細だけど奇妙な 読ませる7編 『私たち異者は』

スティーブン・ミルハウザーの短編集。全7編。  個人的には最初の2編が良かった。 1話目「平手打ち」は、閑静な街に男が出没し、老若男女へ無差別にビンタを喰らわせるという話。この不条理な事件に、いろんな... 【続きを読む】
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