障害のある人たちの労働に関わっていると、働くことの意味や意義について考え込んでしまうことがあります。
私たちは、利用者さんたちは、何のために働くのでしょうか?
この素朴な疑問に、明快な回答を提示しているのが本書です。
著者は日本理化学工業の会長。チョークなどを生産する会社で、障害者が社員の約7割を占めることで知られています。
著者は「人間の究極の幸せ」として、以下の4つを挙げています。
「人に愛されること」
「人にほめられること」
「人の役に立つこと」
「人から必要とされること」
障害者雇用の効用を力説
これらのうち後者3つは、労働によって得ることができます。
ささやかな作業であっても、対価がわずかであっても、利用者さんたちがウチの施設にかよい、頑張って働いてくれるのは何故か? …その理由が分かったような気がします。
障害者を雇用する効用を、著者は力説しています。
同社では実際、作業空間や作業工程などを改善する創造性・柔軟性が伸びたり、社員間に教育・協力への意識が育つなど、さまざまな好影響がもたらされているそうです。
著者の言説からは、1960年代から障害者を雇用して最低賃金を支払い、「世界のモデルとなるような知的障害者の工場をつくってやろう」との夢を抱き、知恵と工夫によって業績を上げてきた経営者ならではの、自負や矜持がうかがえます。そして、福祉作業所という存在を“破壊”してしまうほどのパワーがあります。
「ほめられ、役に立ち、必要とされ、それらが実感できる職場を確立したい」と強く思います。利用者さんたちにとっても、私たち職員にとっても。
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