ウチの施設では、専門学校や大学からの実習生を受け入れています。
多くは、社会福祉士や介護福祉士の志望者。ほかに、小学校教諭や保育士などの養成過程で、福祉施設の現場を体験しに訪れる学生もいます。
毎年コンスタントに受け入れているおかげで、良くも悪くも、さまざまなタイプの学生に出会ってきました。
中でも近年、やや目立っているように思えるのが、当事者的な実習生です。
「当事者的な」と書いたのは、障害者手帳取得など公的機関の認定を、彼らが受けていないからです。
それでも、知的障害や発達障害の特徴があれば、日ごろ見慣れている私たちには分かります。
支援を受ける側にはない資質も
彼らが福祉専門職を目指している背景を、実習担当の教員や学校関係者に訊いてみました。結果、断片的ではありますが、以下のような事情が分かりました。
「少子化の影響で、私立の高校や大学が、軽度の障害がある生徒たちを受け入れるようになっている…」
「高等教育機関に進学している生徒(家族)は、実際に進学ができていることから、障害への認識が不充分…」
「当事者的な生徒(学生)の進路として、障害について理解があって受容的な人々が多い、福祉系の学部(業界)が選ばれがち…」
支援者を目指すはずの人材が、支援を期待しているのであれば、いささか本末転倒ですね。
とは言え、当事者のことを最も深く理解しているのは、当事者に他なりません。当事者自身が支援者を目指すことには、大きな意義があるでしょう。
それに、これからの人口減少社会において、障害者の社会参加は進んでいくはず。福祉の業界においても、支援を職業とする当事者が出てくることは充分考えられます。
しかし、職業人を目指すのであれば、支援を受ける側にはない資質も求められます。ピアサポーターとは異なる立場なのですから。
福祉制度を運営する側には今後、支援の担い手として当事者を活用するための、新たな仕組みづくりが求められそうです。