ウチのような、利用者さんが収益活動に取り組んでいる福祉施設には、しばしば「企業の経営感覚を取り入れましょう」との声が降ってきます。
降ってくる場所は、施設向けに行政が開催するセミナーや、福祉団体の勉強会などの席上です。
福祉施設が利益を上げられず、利用者さんへの工賃が少ないという、全国的な現状があります。
そこで、利益を追求する企業経営の手法を取り入れた、工賃増額への取り組みが求められているのです。
納得できる一方で、私は違和感も覚えます。
企業にできて福祉施設にできないことがあるからです。
枠組みの中で、無い知恵を絞って
働く人の選別はできません。
福祉施設の利用対象は、障害によって作業能力や労働意欲などが低い人たち。能力や意欲を支援してこその“福祉”です。
利用者さんたちを「あなたは作業能力が低いから来ないで下さい」「あなたは労働意欲が上がらないので辞めていただきます」などと選別するような行為は、ありえませんし、あってはなりません。
施設職員への利益分配もできません。
売上から出た利益は、働く利用者さんたちのもの。支援している職員には回せないのです。
制度上、職員の人件費には、行政からの給付金を充てることになっています。「働いている“主役”は利用者さんであり、職員は支援する立場」と考えれば、納得はできます。
とは言え、利益が給与に直結していない構造は、職員のモチベーションに影響します。職員を動かす側にも、労務上の不都合をもたらします(休日の催事で物販する職員は、支援をしていることになるのでしょうか?)。
上記のように、「できない理由」を挙げるのは簡単。もっと挙げられそうな気もします。
ですが、愚痴るばかりでは何も進みませんよね。
この枠組みの中で、わずかでも向上や改善が見られるよう、無い知恵を絞っているところです。