ノンフィクション天竺堂の本棚

若者むしばむ “滅私奉公”風土や奨学金 『ブラック企業と奨学金問題』

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『ブラック企業と奨学金問題』

 若年層をむしばむ社会問題の実際が分かる本。
 多重債務者を支援する団体が開いたシンポジウムでの、専門家たちの発言をまとめたもの。

 長時間労働などの違法を強要するブラック企業でも、若者たちは正社員という待遇を求めて入社する。酷使されて心身が疲弊しているのに、大学時代に負った数百万円もの奨学金を返済するために辞められず、やがて精神疾患や過労自殺へと追い込まれる。

 原因として挙げられてるのは、“滅私奉公”に美徳を見出す、企業風土や国民感情。そして、返済の目処さえ立てられない高校3年生に大金を貸し付ける、日本の奨学金制度。加えて、消費者物価指数が3倍上がる間に、50倍近くも高騰したという大学の学費も。
 これらが複雑に絡み合い、社会問題となって深刻化してる。

 「身内がブラック企業に就職したら」「結婚したい相手が奨学金の債務者だったら」「進学したがる子供に学費を出してやれなかったら」なんて考えてみれば、決して他人事ではないはずです。

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