天竺堂の本棚小説

どっぷり浸れる 濃密な物語世界 『サラゴサ手稿』(上・中・下)

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サラゴサ手稿

 中世スペインの山中を旅する青年騎士が、いろんな人びとに出会い、いろんな話を聴かされる、61日間の物語。

 出てくるのは、謎めいたイスラム教徒の美人姉妹や、神秘を探求するカバラ学者、元貴族というジプシー族長、森羅万象を数学的に解き明かす幾何学者などなど。
 さらには、各人の話の中に、他人の私生活を覗き見ることにハマった奇人とか、叡智を結集した百科全書を出版しようとする変人などの話が入ったりもする。

 キャラが立ちまくった面々の、奇妙にして寓話的なエピソードが、何重もの入れ子構造に。ある話の脇役が、別の話では中心人物として語られたりもする。
 濃密に織られた物語世界は、「『千夜一夜物語』と比肩」なんて言われるそうな。

 なのに、訳文は読みやすいし、注釈は詳細だし、舞台となる国や都市の地図に加え、物語構造を表にした通覧図まで付いてるぞ。懇切丁寧な上・中・下巻。
 どっぷりひたって楽しめました♪

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