ウチの施設にはカフェが併設されています。
就労継続支援B型事業の一環として運営しており、障害のある利用者さんたちが調理や接客などを行なっています。
カフェがオープンしたのは、もう十何年も前。施設の建て替えに合わせて設けました。
実は、建て替え時にカフェ併設を計画していた訳ではありません。
ウチは長年、授産作業に“さをり織り”を取り入れています。現在カフェとなっている空間は、手織り製品を展示・販売するために造ったものです。
一方、新施設には給食設備を設けなければならない規定がありました。元来ウチは給食サービスを行なっていなかったので、展示・販売スペースに来る人たちへの茶菓提供へ、給食設備を使うことにしました。
ウチの場合、想定外の要素が重なってカフェができました。
そのようなカフェを十数年運営してきて、気付いたことをいくつか列挙します。
カフェに内在する大きな可能性
・スタイルの枠組みがユルい
例えば、「喫茶店」「洋食店」などの業態では、緑茶やガパオライスを出すことに少々違和感が伴いますが、カフェならば何でも大丈夫。さまざまな試行錯誤を受け入れてもらいやすいので、前向きな挑戦ができるのです。
・イメージが良い
オシャレ、ステキ、キレイ…カフェはポジティブなイメージを帯びています。それらのイメージは、働いている利用者さんや、働くことを検討している人たちの、夢や意欲を刺激します。もちろん、夢を抱いてもらえるような店舗づくりは欠かせませんが。
・福祉施設と社会の“接点”になる
ウチのカフェでは、メニューの隅に「裏の福祉作業所は見学できます」と書いてあり、それを目にして施設を訪れるお客さんがいます。「福祉施設の中を初めて見た」と言う人も。施設訪問への抵抗感が、カフェを経由することで緩和されるのでしょう。地域に開かれた施設、その実現にカフェは寄与しています。
カフェの運営には、数多くの困難や苦労がありました。
ですが、振り返ってみれば、開店して良かったと思えることの方が多いようです。
ご紹介しているのは、全国にある、障害のある人たちが働いている喫茶店やカフェなどの事例を集めた本。ウチのカフェも、片隅に掲載されています。
スタイリッシュな店、素朴な店、ユニークな店、特別支援学校や大学などで開かれる店…多様さに驚かされるとともに、カフェに内在する可能性の大きさに気付かせてくれる一冊です。