ユニークな切り口で書かれた、山田風太郎による『南総里見八犬伝』。
室町時代後期として設定された物語パートと、それを創作してる江戸時代後期の滝沢馬琴パートが、交互に連なる趣向。
前者は、全98巻106冊もの伝奇巨編が、“風太郎忍法帖”ばりのスピーディーなテンポで展開、さまざまな娯楽要素を詰め込んだ大作のエッセンスが味わえる。
後者は、完結までにかかった28年間の、大きな苦労と小さな幸福に彩られた馬琴の人生を描き出す。
壮大にして絢爛豪華な物語世界と、偏屈で几帳面だったという戯作者の日常…両者のコントラストが実に印象的。
晩年、不遇の果てに失明してしまった馬琴は、それでも書かずにはいられない自分を見出し、嫁の手を借りた口述筆記によって、物語の大団円を目指す。
幸不幸を超えた境地にあって情熱を燃やす老作家の姿が、胸に迫ります♪