よく「好きなことを仕事にしよう」なんて言う。それをトコトン実践し、「新選組」を結成してしまったのが、本書の主人公・土方歳三。
幼少期に出くわした斬殺の光景に魅せられて以来、歳三は「人を斬り殺したい」という危険な欲望を抱き続ける“人外”の存在に。
薬売りの身分では、刀を持ったり、人を斬ったりしたら罪に問われる。
そこで、歳三は「刀で人を斬っても罪に問われないためには?」と考えながら行動。その積み重ねが、新選組“鬼の副長”へとつながっていく。
土方歳三の生涯が、おおむね史実や定説に沿って描かれており、京極版『燃えよ剣』みたいな趣も。
ところが、歳三の内面が“人外”なので、巷間に知られてる副長像や新選組像が、本書では別の様相を帯びる。
歳三の目に映る隊士たち、彼らの描かれ方はビミョーに“意地悪”だぞ。
近藤勇は鈍感で愚直、沖田総司は残忍なサイコパス、山南敬介は士道を盲信してるし、斎藤一は正義を盲信してるし、永倉新八は上下関係が大嫌い…。
「幕末最強の剣客集団」などと称されたりもする新選組が、本書では「はぐれ者たちの雑多な集まり」でしかない。
ファンの神経を逆なでするような筆致。それが痛がゆいというか、不思議と痛快だったり。
1000ページ超を一気読みでした♪