カズオ・イシグロのSF小説。
ノーベル文学賞の受賞後第1作。
舞台は近未来らしい社会で、子供たちの成長に寄り添うAF(人工親友)のクララが主人公。人工知能を搭載した人間型ロボットみたいなもので、太陽光で動くらしい。
購入されたクララは、仕えることになった病弱な少女ジョジーの健康と幸せを、AFとしてひたすらに願い、やがて独自の行動に出る。
観察や学習の性能に優れ、純朴な忠誠心を持ってるクララから見た、ジョジーや家族らの様子が、本書の大きな読みどころ。
気まぐれで残酷で理不尽で脆弱で一貫性のない人間たち。そのあるがままを、精いっぱい受け容れ、理解しようと努めるクララが、何とも健気でいじらしいのです。
飼犬を擬人化して描いたら、似たようなテイストになりそう。
だけど、クララは血のかよわない機械であり、売買される商品でもある。そこが物語に深い陰影を生んでる。
読後に残ってしまう、どーしようもない胸のザワザワ感は、『わたしを離さないで』に通じるかも。