施設長の学び!考え・気付き

中・長期的な経営方針に悩む

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中・長期的な経営方針に悩む

 「あの利用者さんは明日も来てくれるだろうか?」「明後日は現場の職員配置が変わるけれど、うまく回せるだろうか?」そんな直近のことを心配する一方で。
 「あの利用者さんは来年も居てくれるだろうか?」「ウチの施設は、10年後にはどうなっているだろうか?」などと将来の心配もしなければならないのが経営者です。

 将来は曖昧模糊としており、正確に見通すことなどできません。
 それでも、「こうなりたい」「こうあってほしい」との理想を目指していなければ、見通せない霧の中で迷ってしまうでしょう。

 先日、企業経営者向けの勉強会で、数値目標を立てながら経営方針を考えてみる機会を得ました。

 障害のある人たちが働く福祉作業所、ウチのような就労継続支援B型事業所では。
 施設としての収入は、障害福祉サービスの提供による給付金収入がほとんどです。授産事業による売り上げもありますが、こちらは利益をすべて利用者さんの工賃に充てなければならないので、実質的な収入とは見なせません。

 給付金の収入額は、サービスの対象となる利用者さんの数と、利用者さん個々の利用日数(利用率)で決まります。
 給付金を算定するサービス単価は、法律で定められているので、施設側には操作できません。よって、収入を上げるためには「利用者数を増やす」「利用率を上げる」という2つの方策しかないことになります。

 実は、方策はもうひとつあります。人件費の抑制です。
 福祉作業所はサービス業なので、事業費の大部分を人件費が占めているのです。

 とは言え、忘れてはならないのが、福祉の大原則「個別支援」。支援の対象となる人々を、異なる課題・問題を抱える個人として捉え、個別的に対応するという原則です。
 職員1人で利用者3人を支援していた現場を、職員1人で利用者6人を支援するように見直す…このような効率化は、経営的には評価されるかも知れません。しかし、福祉的には問題なのです。
 個人的にも、支援体制の効率化には抵抗を覚えます。そうまでして収入を上げなければならない事業は、もはや“福祉”とは別モノです。

 むしろ、支援は手厚い方が良い。人件費は減らすよりも増やしたいのです。
 人件費が増えれば、支援者の数が増やせます。より良い人材の採用にもつながるはず。

 人件費を増やすには、収入を増やさなければなりません。ここで話は「利用者数を増やす」「利用率を上げる」という方策に戻ります。

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決して安心できない

 利用者数は多いに越したことはないし、利用率も高いに越したことはない。
 どこの施設でも「利用定員いっぱい」「利用率100%」が理想です。給付金収入が上限に達する、この状態を、短期的には目指すべきと思われます。

 ところが、社会的な給与水準は年々上がっています。一方で、サービス単価は抑制される傾向にある。
 利用定員が満たされ、利用率が100%に達しても、中・長期的には決して安心できないのです。

 ならば、どうすれば良いのでしょうか?

 考えられる方策は「経営規模の拡大」。施設を増やすなどして利用定員を増加させたり、新たに提供できるサービスを追加するのです。
 支援を手厚くする、少なくとも支援の質を維持するためには、拡大路線という方針を採るしかないのかも知れません。

 「拡大路線」と言うのは簡単ですが、実行・実現は困難を極めるでしょう。
 他に良策がありそうな気もします。世界的な施設解体の流れに逆行しているようにも思えます。

 おぼつかない数値目標をにらみ続けて終わった勉強会。確固とした経営方針は、まだ見出せていません。

photo credit: CREST Research How Do We Measure Rapport In Interviews? via photopin(license)

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