武士の修身書『葉隠』を基にした、隆慶一郎の時代小説。
江戸時代初期の佐賀鍋島藩が舞台。
「死んだ気になれば何でもできる」なんて言うけど、それを本気で実践してる武士が主人公。
斬り殺されたり、溺れ死んだり、猛獣に襲われたり…みたいなイメージトレーニングを重ね、文字どおりの“死んだ気”に。日常を“死人”として過ごしてる。
こんな人物なので、戦闘では猛攻に徹するし、どんな修羅場でも他人事みたいに平静。ゾンビやターミネーターに通じる頼もしさ、恐ろしさがある。
一方で、いつも詰腹を切る覚悟でいるから、主君・主家の振る舞いが武士道から外れてる時は、ずけずけと遠慮なく苦言する。いさめるためには刺し違えることもいとわないので、部下に持ったら扱いづらいぞ。
窮屈な封建制度の武家社会にあって、大胆不敵に活躍する“死人”。その姿は、むしろ“自由人”っぽく見えてしまう。
そんな奇妙な痛快感や爽快感を、『葉隠』の思想から引き出してるところが、本書の魅力です♪