私が勤める福祉作業所では、就労継続支援B型の事業を行なっています。
かよっている利用者さんは、一般就労を目指して作業に励む人から、施設利用に慣れることが目標という人まで、さまざまです。
ウチの施設は、利用者さんたちが働いている“職場”であり、自宅以外で落ち着ける“居場所”でもあります。
施設に対し、“職場”を求める人もいれば、“居場所”を求める人もいますが、どちらか一方だけではありません。利用者さん個々に、求める程度や割合は異なるようです。
以前どこかで「福祉作業所は職場か? 居場所か?」という議論を耳にしました。
元来は職場で、居場所というニーズが後から加わったのではないか…と私個人は思っています。少なくともB型施設は。
混在しているからこそ
ここでAさんの事例をご紹介します。長期入院していたAさんは、地域のグループホームに入居し、日中はウチの施設にかようという地域生活を始めました。
当初は不安そうだったAさんですが、ウチで作業などに取り組むうち、次第に表情が明るくなり、地域での行動も活発に。やがて、笑顔で「毎日が楽しい」と言ってくれるようになりました。
もしも、ウチが純粋に職場であろうとする施設だったなら、心身の調子が不安定なAさんへ柔軟に対応し、意欲の醸成を見守るという、じっくりとした支援はできなかったでしょう。
一方で、ウチが純粋に居場所であろうとする施設でなかったために、みんなで協力する時の一体感や、任された作業を果たした時の達成感などを、Aさんに体験してもらえた面もあります。
職場と居場所が混在しているからこそ、できる支援があります。
施設長としては、「どちらなのか?」を問うのではなく、「どのように混在させるべきか?」を問うべきかも知れません。