障害者施設にとって授産事業とは何なのか?
そのことを、私はいつも考えてきました。今も考え続けています。
障害者福祉では制度上、職員の人件費を授産事業から出すことができません。制度の是非はともかく、一般企業とは大きく異なる部分です。
ならば、一般企業の観点では、授産事業は何に当たるのでしょう?
企業経営者らへ経営指導や会計セミナーを行なっている人と懇談する機会があったので、私は上記の疑問を投げかけてみました。
利用者を獲得するための“手段”
しばし考えて、その人は「収支計算書の勘定科目で言えば、広告宣伝費でしょうか」。
障害者施設の職員の人件費は、訓練等給付費から支払われます。その給付費は、利用者さんの利用に応じて行政から支払われます。その利用者さんは、工賃収入や就労訓練などを目当てに利用契約を結びます。その利用契約は、工賃収入や就労訓練をもたらす授産事業が前提となります。
授産事業は利用者を獲得するための“手段”とも言えます。
ですが、利用契約へと至る判断は、工賃額と就労実績だけでなされるものではありません。別のところに価値が見出される場合も多いのです。
利用を検討している相手の「あんな仕事がしたい」「ここで働きたい」との想いが、判断に絡むことがあります。ご家族の「あんな仕事をしてほしい」「ここで働いてほしい」との想いが、判断に絡むこともあります。
そのような想いへの働きかけ…。
なるほど、授産事業は「広告宣伝」なのかも知れません。
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