価値観の異なる相手であっても、仕事として支援しなければならない場合があります。福祉専門職に限らず、教師や医師、警察官、弁護士など。
福祉専門職の研修で、価値観の葛藤を経験するためのワークを行ないました。
死刑制度についてのディベートです。個人の信条に関わらず、賛成派と反対派の双方を経験するというルールなので、ある種のロールプレイとも言えるでしょう。
3人1組になって、うち2人が賛成派・反対派として討論し、もう1人は観察者を担当。役割は5分ごとに交代します。
3役を経験、感想話し合う
賛成派は「被害者と遺族の心情は、絶対に無視できません」「どうせ税金を使うなら、凶悪犯の更生よりも、他の福祉課題の解決に回す方が合理的です」などと主張。
反対派は「日々の報道を見れば、死刑で凶悪犯罪が防げないことは明らかです」「人間が判断することですから、冤罪も誤審も決して無くなりません」などと訴えました。
そして観察者は、両者の意見に耳を傾けつつ、討論の様子を見守ります。
賛成派の立場では、意見がいくらでも飛び出します。言えば言うほどに感情が高ぶるのが分かりました。
反対派の立場では、しっかりと考えなければ意見が出ません。気分は冷静に、発言は慎重になりました。
3つの役割をひととおり経験した後、みんなで感想を話し合いました。
「死刑賛成への同調が容易なのは、制度の根底に『やられたらやり返す』みたいな単純で分かりやすい価値観があるからでは?」「死刑反対の言説は複雑で分かりにくいが、そこに人間を“野蛮”から遠ざけているものがあるように思える」などの意見が出ました。
また、ディベートの観察によって、強くて断定的な口調には説得されやすいことや、受容に徹すると反論しにくくなること、自分の価値観に反する態度は取りにくいことなどが、実感として分かりました。
気付きの多いワークでした。
ですが、死刑制度について私は、まだ判断も決断もおぼつかないままです。