ある特別支援学校を見学した時のこと。
そこでは、授産活動で陶芸が行なわれていました。学校で陶器を作り、イベントで販売するそうです。
高等部の生徒たちが、粘土板を曲げるなどして、コップや皿を作っています。
指導する先生によると、「卒業後の就労に向けた訓練です」。
私は疑問と違和感を覚えました。
労働への対価は、「時間給」と「歩合給」に分けられます。
働いた時間に応じて支払われるのが時間給。働いた成果に応じて支払われるのが歩合給。
ちぐはぐな事例は少なくない
社会における労働は、時間給で支払われるものが主流です。
就労訓練のための授産活動は、時間給を想定して行なう方が現実的でしょう。
陶器をひとつひとつじっくりと形作っていく作業は、どちらかと言うと歩合給向き。一般就労を目指しての訓練は難しそうです。
マイペースに行なえる作業を通して労働の楽しさを実感する…そのようなことが目的であれば、陶芸から得られるものは多いと思います。就労訓練の前段階として、あるいは、社会生活を彩る趣味として。
あれこれと考えが浮かんだものの、それらを私は、見学の場で口にはできませんでした。
就労訓練を目的としてビーズアクセサリーを作ったり、ボールペンを組み立てる作業に時間給を支払ったり…私たち授産施設の側にも、ちぐはぐな事例は少なくないからです。
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