障害者支援の現場において、“ほめる”行為は重要とされます。
ほめることで利用者さんの自己肯定感が向上し、行動や判断への自信が育って、さまざまな困難に対処する“力”が養われるのです。
ところが、利用者さんの家族や、支援者らの間では、しばしば「ほめてばかりいたら、結果的に甘やかすことになるのでは?」「普通にできるようになったことでも、ずっとほめ続けなきゃならないの?」などと疑問の声も聞こえます。
ほめることの“頻度”や“程度”については、考えが分かれているようですね。
「知的障害のある人たち…特に自閉症スペクトラムの人たちは、『汎化』が苦手。こまめにほめた方が効果的なんですよ」
そう教えて下さったのは、発達障害者支援に取り組んでいる臨床心理士の方でした。
地道に評価を積み上げていく
汎化は般化とも書きます。あえて簡単に言うと「一般化」に近いでしょうか。
ある場面のある行為についての経験を、異なる場面や行為にまで“拡大”して捉えるのが苦手…これが「汎化が苦手」ということです。
汎化が苦手な利用者Aさんが、室内を掃除していて、それを支援者が「頑張ってますね。きれいになりましたよ」などとほめたとします。その翌日、屋外を掃除していたAさんを、支援者はほめなかったとします。
この場合、Aさんは「支援者に掃除をほめられた」とは思ってくれません。少なくとも、思ってくれない可能性が高くなるそうです。
「汎化が苦手な人に『自分はほめられている』と実感してもらうためには、さまざまな局面で地道に評価を積み上げていくことが大切です」と心理士さん。
相手の性格や知的能力などによって“度合い”は変わるようですが、ほめること自体の重要性に変わりはありません。