「『高い場所に上がりたい』という熱意が、ハシゴという道具を生み出しました。私たちの身近にあるハシゴは、先人たちの熱意の結晶なのです」
研修で訪れた特別支援学校の、校長先生の言葉です。
先生は好んで“ハシゴの話”をなさるとのこと。実直な人柄がうかがえました。
自分たちを取り巻いている“すでにハシゴがある環境”について、私は考えました。
「高い場所に上がりたい」という“欲求”はあるけれど、もはや“熱意”は無いようです。
未解決の課題に取り組む熱意を
ハシゴが存在しなかったころは、高い場所に上がることは困難だったはず。上がることを必要とする人にとっては、切実な課題であったに違いありません。
ハシゴが発明され、普及した現在。高い場所に上がることは、もはやハシゴを使うかどうかといった選択の問題に過ぎないでしょう。
ほんの10年前、20年前に比べれば、障害者福祉は大きく進展したと言われます。
施設などのハード面も、制度などのソフト面も、少なからず拡充されていることは確かです。
それだけに、「私たちが行なっている支援が、すでにある中から選択するだけに終わっているのではないか?」といった懸念も浮かびます。
すでにあるものを効果的に使うことはもちろん大切ですが、未解決の課題に取り組む熱意を忘れてはなりませんね。
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