障害者の就労についての会合で、自閉症スペクトラムの青年3人と懇談する機会を得ました。
3人は当事者サークルの運営メンバーで、それぞれに就労しているそうです。
うち1人は福祉作業所で働いていて、業務はカリントウの営業。訪問販売と顧客開拓です。
私は「営業の仕事、難しくはありませんか?」と訊ねました。
「営業に向かないと言われますよね、僕らみたいな者は。対人コミュニケーションが苦手だから」
当事者サークルを運営しているだけに、青年は自身の障害を正しく把握し、受容している模様。加えて、障害について冷静に語ることができました。
「だけど、僕には高い集中力があります。カリントウを売るために、いろんな情報を集めたりして、僕はカリントウについてとても詳しくなったんです。材料や製法、種類、歴史…」
「嫌な顔をされても気になりませんし」
「なるほど。マニアックに熱く語れると」
「はい。もう1時間でも2時間でも。それでカリントウの魅力が伝わるみたいで、販売先を1カ月間で11件開拓したこともあります」
「大したものだなぁ。…そうだ。ひょっとして、あなたは営業先で邪険にされても平気では?」
「そう言われればそうですね。嫌な顔をされても気になりませんし。飛び込み営業とか、割と気軽にやってます。同じところに何度も何度も顔を出して、ようやく買ってもらったり」
カリントウのことを情熱的に語り続ける青年に、根負けした相手が苦笑いしつつ財布を出す…そんな光景が目に浮かびます。
高い集中力を活かして、扱う商品に精通する。対人コミュニケーションの困難さを活かして、気後れを感じることなくアグレッシブに売り込む。…むしろ、自閉症スペクトラムは営業向きではないかと思えてしまいます。
ですが、別の青年は「私には営業なんて無理。知らない誰かに物を売るより、1人でコツコツと作業をしている方が好きです」と話してくれました。実際には、彼のようなタイプが、自閉症スペクトラムにおいては大多数なのでしょう。
青年たちとの懇談がなければ、私は「自閉症者は営業ができない」という短絡的な固定観念に縛られたままだったかも知れません。
当ブログに何度も書いていることですが、個々人に向き合い、その可能性を信じることの大切さを、福祉専門職として改めて実感しました。