アメリカンコミックには、おなじみのスーパーヒーローたちを通常とは異なる設定で描く、“もしもの世界”みたいな趣向があって、本作はそのひとつ。
爆発するクリプトン星から、乳児を乗せた小型ロケットが脱出。
不時着したのは、アメリカの農場ではなく、旧ソビエト連邦の集団農場だった…。
やがて超能力を開花させ、シベリアの空を飛ぶスーパーマン。
共産主義の理念に染まってはいるものの、地球を愛し、弱者を慈しむ、善良な本質は変わらない。
だからこそ、強大な軍事力として、目立つプロパガンダとして、国家に利用されてしまう姿が哀れ。
DCコミックのキャラクターたちが、立場を変えて絡んでくるところも面白い。
天才レックス・ルーサーは、西側諸国を脅かすスーパーマンに科学力で対抗。スーパーマンの劣化コピー“ビザロ”を創り出したり、異星人の死体からパワーリングを入手して“グリーンランタン”の軍団を編成したり。
秘密警察に両親を殺され、無政府主義者となってテロを繰り返す、ソ連版“バットマン”も登場。奇略でもってスーパーマンに危機をもたらすぞ。
こんな物語をどう着地させるのかと思ったら、時間SFに類するオドロキの結末へ。
これがまた巧みな構成で、運命の深遠さをうかがわせたりもして、読ませます♪