クリストファー・プリーストの長編SF。
近未来のディストピア的なイギリスをさまようカメラマンや、第一次大戦時に密命を帯びて戦地へ向かう奇術師、異界「夢幻諸島」での冒険などなど…。
オムニバス短編集とも言えそうだけど、それにしては各話バラバラな印象。半面、固有名詞とか登場人物とか状況とか構図とか、何かしら共通した箇所があったりもする。
ちょっとだけ似てるというか、ビミョーにズレてるというか。そんな近似した物語の連なり。
「これってどうなるの?」なんて戸惑いつつページをめくるうち、徐々に方向性らしきものやスピード感が出てくる。
やがて物語は、思いがけない盛り上がりを見せ、ひとつの“結末”にキュっと収まってしまう。
読後「なるほど!」と納得&感服する一方で、何が進展してこうなったのかはよく分からない。
クラクラと幻惑させられるような読み味があって、これは唯一無二、プリーストならでは。とにかく個性的で刺激的です。
驚かされ、はぐらかされ、不思議な余韻が後を引く。巧妙な奇術を観せられた気分に近い。
SFとしての“タネ”が結局よく分からないままなところも、やっぱ奇術的かもw