天竺堂の本棚小説

汚染された近未来 鋭い文明批判 『錆びた太陽』

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『錆びた太陽』

 恩田陸の近未来SF。

 舞台となる日本は、原発事故によって国土の2割が居住不能になり、ゾンビみたいな連中が徘徊してる。
 広大な汚染区域を監視するアンドロイドたちの前に、国税庁から派遣されてきたという元気な女性職員が現れ、謎めいた目的を持って危険地帯へ踏み込んでいく。

 何故か、全編に「太陽にほえろ!」とか「サンダーバード」とか「トラック野郎」とか、“昭和”な小ネタがふんだんに盛り込まれてる。
 おかげで、サスペンスフルなはずの状況に、妙にユーモラスで牧歌的な空気が。

 軽い読み味ではあるけれど、物語の裏側に、著者の鋭い皮肉・批判がひそんでる。
 原発事故による汚染問題を抱えながら、目先の利益ばかり追って脱原発へ舵を切れず、重すぎる負債を将来世代へ先送りしようとしてる…そんな“過去≒現在”への後悔が読み取れます。

 ビジュアルがやたらとキョーレツそうなので、読んだら実写化を期待してしまうぞw

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