タイトルから想像したのは、あんずという名の元気な主人公が、逆境や挫折を乗り越えてシアワセになるという、NHKのドラマっぽい物語。「燃えよドラゴン」ネタが少々入ってたりして。
実際には、室生犀星の詩から取ったタイトルで、物語とはあまり関係がなかったりする。
ところが、本書を読み終えると、何となくしっくりと似合って感じられるから不思議です。
東京・下北沢の小さな本屋を舞台に、クセのある常連客たちの人間模様が、ややユルいノリで描かれる。NHKのドラマっぽい物語と言えなくもない。
しかし、その人間模様の“裏側”に、別の人間模様が広がってる。
親切や善意から発してるような言動や、迷惑をバラまきながら生きてるような人物が、まったく異なる要素の産物だったりする。そのことが読者へ明かされる。
物語の奥行きがグンと深まっていく。キレイごとだけでは済まないジンセイの、だからこそ面白いという妙味に、改めて気付かされたりして。
あと、読めば本屋がやってみたくなるぞw