イタリア在住の日本人ジャーナリストによるノンフィクション。
トスカーナ州の山奥にある「モンテレッジオ」は、本の行商人たちの村だった。…という話を、ベネツィアの古書店で小耳にはさんだ著者。
実際にモンテレッジオを訪れ、かつての行商を知る関係者らに話を聞いて回る。
村人や出身者たちの郷土愛が強すぎ、思い出話に熱くなって、なかなか“本”に関する話題が出てこなかったりするのが面白い。
丹念な取材によって、物産に恵まれなかった寒村の人々が、行商へと乗り出していった歴史が浮き彫りに。売る物がないので、初めは聖人像を刷った御札を扱い、やがて本を仕入れるようになったらしい。
カゴに本を詰めて売り歩く者や、市場の屋台に本を並べる者がいた。ヨーロッパ各地へ足を伸ばす者や、新大陸に渡る者までいた。本の目利きになり、街に出て書店を構える者もいた。
寒村は他にもたくさんあったはず。
なのに、「モンテレッジオだけが本の行商に特化していった理由は?」との根本的な疑問についてイマイチ突き詰められておらず、少々残念。
それでも、本を手売りしていた人々の存在には、熱いロマンを覚えます。
富裕層や知識人とは異なる次元で、モンテレッジオの行商人たちは、本の重さを文化の重さと信じ、一冊一冊手売りしていたのだ。
取材の合間に撮ったと見られる、数ページおきにはさまれてる写真もイイよ♪