天竺堂の本棚小説

家庭人を目指す 凄腕の殺し屋 『AX』

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『AX』

 伊坂幸太郎の連作短編集。

 主人公は凄腕の殺し屋、通称「兜」。普段は平凡なサラリーマンとして、妻子と暮らしてる。

 何故か兜は恐妻家で、妻の機嫌を損ねないよう、家庭では常に細心の注意を払ってる。深夜に帰宅した時は、寝てる妻を起こさないため、魚肉ソーセージを静かにかじったり。

 兜が涙ぐましくもコミカルな努力を重ねてる、その理由は、読み進むうちに明らかになってくる。
 そうして本書が、サラリーマンの裏稼業を描いたノワールではなく、妻子に恵まれてる殺し屋を描いた家族小説だと気付かされる。家庭人であろうとする兜に「夫って、父親って、こうだよなぁ」と共感する。

 幕切れはなかなかに切なくて、ホロリとさせられるぞ♪

追記:連作のタイトルはアルファベット順に並んでるのに、何故か「D」が欠落。雑誌連載では「Drive」という短編のはず。いずれ何かに収録されるのか…?

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