ユニークな自己啓発本。と言うか、むしろ“後退”を指向してるエッセイ。
著者は40代の韓国人男性。
3浪して難関美大に入学、兵役を経て30歳で卒業し、会社員とイラストレーターを兼業するも、どちらにもヤル気を見出だせずにドロップアウトしたそうな。
日本以上の学歴社会・競争社会とされる韓国だけど、近ごろは学歴や競争から外れた生き方も評価されつつある模様。
努力が報われるとは限らないし、成功が幸せをもたらすとも限らないし、自分と他人を比べても不毛なので、無理をせずにマイペースで生きていこう…みたいな、著者が半生から得た諦観を、さまざまな文言や表現でもって繰り返し主張。
自分の惰弱さや卑俗さを赤裸々につづる、マゾっ気さえうかがえる低姿勢、これが意外と読ませるぞ。著者の手による挿画、スネ毛が目立つ白ブリーフ1枚のオジサンキャラも、トホホなテイストに合ってる。
ただし、著者は現在の暮らしぶりについてほとんど触れていない。具体例に欠けた精神論に終わってるところが残念。
それでも、「キツい人生から逃げ出したい」とか思い詰めてる時は、弱さや惨めさを肯定してくれる本書に救われるかも。
必要とする人はいると思います…。