利用者Aさんのエピソードをご紹介します。
ウチの就労継続支援B型を“卒業”し、現在は民間企業で働いています。
Aさんは真面目な人柄で、言動も穏やかで控えめでしたが。
まったくの“別人”へと変わり、周囲を驚かせることがありました。
ウチの利用者さんたちが一堂に集まり、お菓子やジュースなどを飲み食いしながら、カラオケや演芸などを披露し合う、ささやかな“パーティー”。
年に数回開かれる、この行事の時だけは、普段と異なるAさんが見られたのです。
パーティー会場には、小さな舞台が設けられます。
金髪のカツラをかぶり、派手な衣装をまとったAさんが、にぎやかなBGMに乗って登場。太い声で歌い、ダイナミックに踊ります。
拍手する利用者さんや職員たちの間を、握手をしながら回っている、その姿はロックスターさながら。Aさんの中に溜まりに溜まった何かが、一気に噴出しているようにも見えました。
この時に備え、Aさんは何週間も前から、カツラや衣装を準備したり、BGMをダビングしたり、歌の練習を重ねたりするそうです。当人が教えてくれました。
安心して開示できる場
私たちには「“キラキラ”したい」という願望があります。
「羨望や賞賛を集めたい」「周りから一目置かれたい」「理想的な自分でありたい」…そのような思いを、大なり小なり誰もが胸に抱いています。行動に移すかどうかは、人それぞれですが。
かつて、Aさんは通園時にサングラスを着けていました。
ある時期からサングラスを見なくなり、「どうしたのだろう?」と思っていたところ、Aさんの親御さんが「近所の小学生たちに笑われて、サングラスを自分で叩き割ってしまったんです」とこっそり教えて下さいました。
“キラキラ”したい一心での振る舞いを、悪意にさらされるおそれがなく、安心して開示できる場。Aさんにとって、それがウチの施設でのパーティーだったのでしょう。
自転車に乗るAさんを、時おり見かけます。あいさつを交わすこともあります。
Aさんは近ごろ、またサングラスを着けるようになりました。何らかの良い変化が、Aさんに起きたのかも知れません。