法務省が公表している「矯正統計」。
日本国内の受刑者に関する、期間ごとの統計データです。
2011年を見てみると、新受刑者は2万5499人。このうち、知能指数が69を下回る者は5532人。「テスト不能」が936人。
新受刑者全体の約4分の1に、知的障害があると見られます。
本書では、罪を犯した障害者(触法障害者)たちの実態が、地道な取材によって明らかにされています。
刑務所が弱者の“受け皿”に
触法障害者の多くは、障害を抱えているのに福祉サービスが利用できず、社会から孤立してしまった人びとです。劣悪な家庭環境、地域社会の無理解、行政側の対応不足など、事情はさまざま。
何らかの犯罪によって逮捕され、“裁判”についての理解も不充分なままに実刑判決を受け、刑務所に入ります。やがて刑期を終えても、出所した“塀の外”に居場所は無く、再び犯罪に走って刑務所へ…。
このような悪循環が重なるうち、彼らの心には「刑務所こそが自分の居場所」との意識が芽生えていくそうです。
福祉の“網”が救えなかった弱者、その“受け皿”として刑務所が機能している…歪んだ現実を浮き彫りにしています。
「今、日本社会は、少しばかり異質な人たちをいとも簡単に排除してしまう、そんな風潮に覆われているような気がする。このような殺伐とした時世のなかでは、福祉とつながっていない知的障害者は、真っ先に排除される対象となるのではなかろうか」と著者。
福祉制度のさまざまな問題に加え、刑事司法や刑務所、出所後の支援体制において、障害者への理解や配慮が欠如している点を、厳しく指摘しています。
本書の初版は2006年。社会に大きな波紋を投げかけ、これまでに触法障害者の支援へ向けた具体的な動きが生まれています。
障害者を福祉につなげることの大切さを、“つながる側”にいる者として、改めて認識させられました。
photo credit: Mr. Physics via photopincc