隣町にある就労継続支援B型の福祉作業所。
飲食店を運営しており、地元では「おいしい」と評判です。
売上アップを目指し、土・日曜や祝日もほとんど休まずに営業を続けていたのですが。
近ごろ、日曜と祝日が店休日になりました。
そこの施設長さんに話をうかがったところ、「ちょっと力を抜いてみようかと思いまして」という回答でした。
飲食店で働いていた利用者さんのうち、作業能力や労働意欲の高かった人たちが、就労継続支援A型を希望し、相次いで移籍してしまったそうです。
売上アップ、そして工賃アップを掲げていたその作業所にとっては、これまでの努力が報われない結果となった形。施設長さんは、どこか落胆しているようにも見えました。
「頑張ってね」と見送るばかり
頑張っているB型事業所であっても、利用者さんの工賃が最低賃金に届いている施設はほとんど無いでしょう。少なくとも、私は実例を知りません。
一方、A型作業所は最低賃金の支払いが義務付けられています。運営に力を入れているかどうかに関わらず、利用者さんには最低賃金が支払われるのです。
ウチの施設でも同様のことがありました。高い工賃を求める利用者さんの、A型事業所への移籍です。
A型の定員が空いており、利用者さんが移籍を希望するならば、よほどのミスマッチが生じない限り、その人は出ていきます。B型の私たちは「頑張ってね」と見送るばかりです。
能力や意欲のある利用者さんが、より高い金銭的評価を求めてB型からA型に移ることは、ある種の“成長”です。福祉事業にたずさわる者としては、喜ばしく捉えるべきでしょう。
とは言え、これは利用者の減少ですから、福祉作業所を経営する立場では、手放しで喜べない心境。
移籍を嘆いても仕方がない。施設にいる人に着目しましょう。
この人は何故A型に移籍しないのか? この人がウチの施設に求めているものは何か?
また、新たな利用者さん…A型があるのにB型の利用を選択した人にも、目を向けるべきでしょう。
この人は何故A型を選ばなかったのか? この人がウチの施設に求めているものは何か?
目の前にいる利用者さんを見つめ直せば、伸ばすべきB型事業所の良さが明らかになるはず。
以前に書いた「B型事業所は誰のため?」あたりから、ずっと考えていることです。