
ウチの施設では年に一度「家族会」という会合を開いていました。
過去形で語るのは、現在は開いていないからです。会合は廃止しました。
30年以上前に無認可の通所授産施設として始まった当初、会合の名称は「保護者会」でした。
利用者さんのご両親らをお招きし、施設での日中活動の様子を見ていただいたり、施設の運営方針などをお伝えしたりしていました。
やがて「利用者さんは成人なのだから“保護者”はやめよう」との声が出て、「家族会」に改称。
以来、施設側としては「ご家族と直接交流させていただく大切な機会」と位置付け、毎年開いてきたのです。
ところが、開催を繰り返すうち、ご参加下さる方がたの高齢化が目立つようになりました。
いささか込み入った説明をご理解いただけない様子の方や、「出席するだけでひと苦労」という疲れた様子の方など……。さらには、介護施設に入所したり、お亡くなりになるなどして、家族会への参加自体ができなくなった方も出てきました。
“授業参観”を思わせる行事
ご出席が徐々に減少し、会合として成立させられる見通しが立たなくなった時点で、私は家族会の廃止を決断、その旨をご家族らに通知しました。特筆されるような反応はありませんでした。
以後の各種連絡はすべて文書で通知することになって、現在に至ります。
全国に「◯◯学園」という施設が散見されるように、障害者施設は“学校”を模して設立されてきた歴史があります。そのせいか、どこか“授業参観”を思わせる家族会という行事にも、古い時代のにおいが漂っていました。
福祉作業所を“成人に労働を提供する場”と見るならば、授業参観みたいな催しはふさわしくないのかも知れません。
時代の変化とともに、障害者施設の在り方も変わります。
いささか寂しい気持ちもありますが、新しい何かを取り入れるためには、古い何かを捨てていかなければならないのでしょう。