精神科医フランコ・バザーリアの評伝。
1978年、イタリアにおいて世界初の精神科病院廃絶法「180号法」を成立させた、その立役者として有名な人物。
監獄さながらの劣悪な施設に隔離・収容されてた患者たちを社会復帰させ、地域の精神保健サービス機関で治療・支援に当たるという新たな仕組みを確立、世界中の精神医療・福祉に大きな影響を及ぼした。
著者のミケーレ・ザネッティは、バザーリアと共に制度改革を推進した政治家で、そのせいか、バザーリアの人物像よりも業績を中心に記してる印象。
自ら院長に就いた病院を改革し、医療面での実績を重ねつつ、精神科病院の実態を告発するような本を著して国際社会の関心を高め、政治家も芸術家も味方にし、若い医療従事者らを育て、WHO(世界保健機構)の認定を取り付け…と着実に歩みを進め、世間の根強い反発に対抗しながら、改革を成し遂げた、その過程がよく分かります。
決して個人の成果ではないだろうけど、高い理想と実務能力を併せ持つ、バザーリアの存在は大きい。
ただし、こーゆー傑物に恵まれなかった日本みたいな国でも、「患者を隔離・収容する精神科病院が解体されても、社会秩序は充分保たれる」ことは間違いないはず。
医療コストも減らせるそうなのに、どうして解体が進まないの?