宝石とニンゲンの関係を、さまざまな切り口から語ってる本。
著者は宝飾業界での豊富なキャリアを持ちながら、古代史や物理学の研究者でもあるらしい。
宝石に魅入られた王侯貴族たちが歴史を動かしてきた話とか、日本産の養殖真珠が世界を席巻していく話とか、女性の装身具として生まれた腕時計を軍隊が採用することになった話など、宝石自体に無関心な者(私みたいな)にも興味深いぞ。
個人的に面白かったのは、ダイヤモンドの採掘から販売までを手がけるデビアスグループが展開した、巧妙なマーケティングのエピソード。
南アフリカでの採掘増加を背景に、一部の上流階級が愛好してたダイヤモンドの需要を庶民へ拡げるため、“結婚”に結び付けることを発案。求婚者へ指輪を贈ったという貴族の物語を探し出し、有名な「ダイヤモンドは永遠の輝き」というキャッチコピーでもって謳い上げた。
結果、世界中の人びとへ「結婚には指輪が不可欠」「婚約・結婚指輪の宝石はダイヤモンド」との価値観を拡めることに成功したそうな。
皮肉の利いた表現が駆使されてるので、読みながら「キラキラ光る石コロを欲しがる連中って愚かだなぁ」なんて思ってしまう。
けれど、そんな私が大切に思ってるシロモノは、他人から見れば陳腐極まりないんだろうな。
泥沼みたいに深くて、簡単に踊らされるほどに薄っぺらい、私たちの物欲について考えさせる一冊ですw