「利用者さんは増えたんですけど、おかげで工賃が減ってしまいましてね…」
ある福祉団体の会合で、就労継続支援B型施設の施設長さんが、苦笑しながらボヤいていた言葉です。
ウチもB型施設なので、ボヤく気持ちは分かります。
私たちが勤める就労支援施設には、奇妙な矛盾が抱え込まれているのです。
就労継続支援B型施設の場合、授産事業で得た利益は、働いている利用者さんたちに分配する仕組み。
そのため、利用者数が増えると当然、利用者さん1人あたりの工賃は減少します。
利用者さんが増えても、授産事業の生産量や売上高がすぐに増える訳ではありません。
むしろ、一時的に減少する場合が多いでしょう。
それでも果敢に取り組む人たちが
新しい利用者さんには、施設に慣れたり、作業を身に付けたりしてもらう必要があります。そちらへ職員が重点的に支援を行なえば、その分、全体への支援が手薄になって、生産量や売上高の減少にもつながるのです。
一般企業であれば、生産量や売上高の増加を見越した上で、労働者の採用を進めるはず。
ですが、B型施設では、そのような計画は立てられません。
利用定員に余裕があるならば、利用希望者は基本的に受け入れます。より適した福祉サービスが他に見付かれば、そちらを勧めることもありますが。
さまざまな矛盾に気付き、認めながら、それでも果敢に取り組む人たちがいます。
ボヤいていた施設長さんも、言葉の裏に「工賃を増やさねば」との熱い想いがうかがえました。