施設長の学び!現場の学び

成長? 適応? 改善していた偏食

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 ウチの施設では1月、「成人の日」に合わせて成人祝賀会を開きます。
 新成人の利用者さんをお祝いする、成人式に相当する恒例行事です。とはいえ、お祝いの対象となる二十歳の利用者さんがいる時にしか開けないのですが。

 宴会場でコース料理を会食することが、祝賀会での恒例です。
 フォーマルな場での食事は、利用者さんたちにとって大きな刺激となる模様。みなさん毎回、率先して行事を楽しんでくれます。

 先日開催した成人祝賀会での出来事を話します。
 祝賀会に参加した利用者Aさん。ウチの施設では古参のメンバーです。

 Aさんは10カ月ほど前、実家を出てグループホームに移りました。当時のことは「支援者として“親亡き後”に直面」という記事にまとめています。
 その後、病気だったお父さんは他界し、お母さんは認知症が進んで介護施設に入所。ご両親に代わって現在はお兄さんが、Aさんの後見人的な立場を担っています。

 これまで何度も成人祝賀会に参加してきたAさんですが、その時は必ずお母さんが付き添っていました。
 Aさんは偏食がひどく、コース料理はほとんど食べられません。そこで毎回、Aさん向けの別メニューを、お母様が会場側に自腹でリクエストしていました。

 そうしてこのたび、Aさんは初めて“お母さん抜き”で祝賀会に参加しました。
 お兄さんからリクエストなどは来なかったので、Aさん向けの別メニューは用意していません。それに、私たちとしては正直、お母さんの意向によってAさんだけが別メニューであることに疑問を抱いてもいたのです。

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コース料理 抵抗なく平らげる

 行事が始まる前、私たち職員は「Aさんは大丈夫だろうか?」「何も食べられずに不満を訴えるのでは?」などと気をもんでいたのですが。
 それは杞憂に終わりました。

 出てきたコース料理を、Aさんは抵抗なく食べたのです。野菜の食べ残しなどは少々見られたようですが、おおむね「平らげた」と言える状態でした。
 私たちは大いに安堵したものの、同時に「Aさんが今回コース料理を食べることができたのは何故か?」との疑問を抱えることになりました。

 職員のひとりは「グループホームでは好みの料理ばかりが出るわけではないはず。そんな食生活に鍛えられて、Aさんの偏食が改善したのだろう」と考察。
 別の職員は「お母さんが決まった料理ばかり与え続けていたのが原因。Aさんは本来いろんなものを食べることができる人なのかも知れない」と見ました。

 適応なのか、成長なのか、それとも……Aさんが変化した理由は、まだ分かっていません。いずれにせよ、お母さんが祝賀会に付き添い続けていたなら、Aさんの偏食は続いていたと思われます。
 Aさんの偏食が改善したことを、お母さんにお伝えして喜んでいただきたいところですが。残念ながら、今となっては難しそうです。

Cutlery Stock photos by Vecteezy

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