天竺堂の本棚小説

臨死体験めぐるスリリングな物語 『航路』(上・下)

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スリリングな臨死体験 『航路』(上・下)

 コニー・ウィリスSF大作。上下巻。

 臨死体験を擬似的に起こせる物質が発見され、認知心理学者と神経内科医のチームが、この物質をボランティア被験者たちへ投与し、聴き取り調査を始める。
 ところが、アクシデントが続発して実験が進まなくなり、主人公の心理学者自らが被験者に。

 で、実験を重ねるにつれて明らかになる、臨死体験の内実。これがなかなかに刺激的でスリリング。

 脳死直前、主人公は驚くべき“場所”を訪れる。
 もうこれがホントに予想外。「よりによって、そこ!?」と唖然呆然。

 この“場所”の謎を解き明かすべく、主人公は迷路みたいな大病院内を奔走する。

 工事中で通れなかったり、たまたま相手が不在だったり。
 妨害するかのように立ちはだかる連中もいる。スピリチュアルなトンデモ本の作家、死者と交信したと言い張る患者、戦争時代の武勇伝しか話さない老人、心臓病で災害マニアの少女、ERに搬入される薬物中毒者、などなど…。

 主人公は何故に、こんなに駆けずり回らなければならないのか? このドタバタに意味はあるのか? 

 混乱が極まってきたところへ、キラーパスみたいに突然、驚くべき急展開というか大どんでん返し。
 下巻の中盤で「いくら何でも、これは無いだろう」という事態に。

 完全にお手上げ状態。この先どうなるのか、もはや見当もつかない。
 だからこそ、物語の行末を見届けたくて、ページをめくる手が止まらなくなる。「マトモに決着できないのでは?」「未完だったりして」なんて不安を抱きながら。

 ところがですよ。
 読み進むうち、さまざまなモノゴトが収まるべきところに収まっていくのだ。終幕はピタリときれいに着地してしてしまう。

 ヤラれた。読み終えて納得の、巧みな名人芸。堪能しました♪

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