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“親亡き後”に備えて

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“親亡き後”に備えて

 障害児・者の親御さんたちが懸念する“親亡き後”の問題。
 自分たちの死後、この子はどうなるのか…模索し、悩み続けている方は多いようです。

 私が見聞きした2つの事例をご紹介します。
 知的障害のあるAさんとBさん、両者のご家族の事例です。

 AさんとBさんは共に40代後半。愛情と理解のある家庭に育ち、地元の就労支援施設を利用していました。
 違うところは、“親亡き後”への備えでした。

 Aさんの親御さんは、用事などで自宅を留守にする時、近隣にある入所施設のショートステイを利用していました。
 当初は寂しがっていたAさんですが、何年にもわたって利用するうちに慣れてきた模様。自宅と異なる環境や、親御さんのいない暮らし、馴染みのない支援者からの支援を、受け入れられるようになっていました。

 Bさんの親御さんは、家族で外出する時、必ずBさんを伴いました。「この子が寂しがる」「任せた人の迷惑になる」との考えからです。
 遠方での葬儀に泊りがけで出かけた際、ショートステイを利用したことがあるそうです。Bさんは終始拒否的で、憔悴しきって帰宅し、驚いた親御さんは二度とショートステイは利用しませんでした。

 Aさんは近ごろ、ショートステイで利用していた入所施設に移行、親元を離れて生活するようになりました。
 親御さんは「寂しいが、年を取ってAの面倒を見ることが難しくなっていたので、安心している」と話しています。

 Bさんは就労支援施設の利用を続けており、70代後半の親御さんが毎日、クルマで送迎しています。
 親御さんは「この生活がいつまで続けられるのかは分からないが、自分たちが元気な間はBと暮らしたい」と話しています。

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喜びや悲しみを分かち合う

 どちらの親御さんも、我が子を慈しみながら、誠実に生きてこられたと思います。そこに正解も間違いもないでしょう。

 そうであっても、“親亡き後”を予想してみると、より支援が必要になるのがBさんであることは確かです。
 親御さんのいない生活を、Bさんはほとんど経験していません。Bさんにとっての“親亡き後”は、いささか不安で、つらい人生になりそうです。

 可能な限りBさんと暮らしたいと願う親御さん。気持ちは分かりますが、そのような親御さんの願いは、Bさんの将来的な不安の上に成り立っていると言えるかも知れません。
 Aさんの場合はどうでしょう。入所施設で暮らすようになったAさんの将来的な安心は、一緒に暮らさないことを選んだ親御さんの罪悪感や寂しさの上に成り立っていると言えそうです。

 喜びや悲しみを分かち合うのが家族…などと言われたりしますが、AさんとBさんのご家族を見ていると、まさにそう思います。

 入所施設で晩年を過ごすことが、誰にとっても良いという訳ではありません。最良の選択は、個々人で異なるはず。
 とは言え、“親亡き後”について早い時期から考え、計画し、準備を重ねておくに越したことはなさそうです。

photo credit: dlanor smada Self-satisfied via photopin (license)

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