私にはダウン症の実弟がいます。
当サイトでは何度も触れているので、詳細はそちらをお読み下さい。
現時点で、弟は40歳代の後半。心身の能力が年々低下し、近ごろは認知症に似た言動も見られます。
弟は地域生活援助事業を利用しています。障害者向けのグループホームで生活しているということです。
グループホームを運営しているのは、私が施設長を務める福祉作業所です。
両親は健在で、グループホームの近隣に住んでいます。2人とも、弟の世話をできる程度には健康です。
このような家族の状況を知った人から、時おり「何故?」と疑問の目を向けられることがあります。やや遠回しな言葉で、問いかけられることもあります。
この人たちの疑義を簡潔に表現してみれば、「元気な両親がいて、実兄は福祉専門職に就いている。それなのに、どうして当人はグループホームで生活しなければならないのか?」ということになるでしょう。
「福祉業界で働くようになったのは、弟がきっかけです。しかし、弟のためではありません」…私はそう答えるようにしています。
弟の人生は弟自身が切り拓くべき
私は福祉専門職であり、支援対象には弟も入ります。実際に弟を支援することもあります。
ですが、弟の支援を目的として福祉専門職に就いた訳ではないのです。
私には私の人生があり、それをより良くしたいと思っています。
同様に、弟には弟の人生があり、それをより良くしてほしいと思っています。そして、弟のより良い人生の追求を支援することが、兄としての、福祉専門職としての、私の役割であると考えてもいます。
介護サービスも使いながら、弟はグループホームで生活しています。
のんびりと暮らしているように見えますし、事実そうなのかも知れませんが、弟なりに幸せを追求する姿でもあるのです。
弟の人生は弟自身が切り拓くべきで、それは決して不可能ではないはず。
グループホームの弟を見るたび、可能性というものの“のびしろ”に気付かされます。
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