
地元自治体が開いた虐待防止研修での話をします。
障害者施設の管理者や虐待防止担当者が対象。コロナ禍以降としてはひさびさの集合研修とあって、会場は活気に包まれていました。
私たち参加者は、テーブルごとに6~8人のグループに分かれて講義を受けました。さまざまな演習にも取り組みました。
研修での演習のひとつに、身体拘束に関するものがありました。
身体拘束をしなければならない利用者の家族と面談し、施設側として事情を説明、理解を求めるというものでした。
各グループは“施設側”と“家族側”に分かれ、与えられた設定を元に配役。
たまたま私は“施設長”の役が当たりました(そのままですね)。“サービス管理責任者”と“現場の支援員”と一緒に、“利用者の兄”と“利用者の姉”を相手に面談を行ないます。
兄姉へ説明する内容は「利用者Aさんによる問題行動への対処が難しいため、1日のうち一定時間、Aさんを自室に入れて施錠する」。個室に閉じ込める行為も、身体拘束の一種です。
私は口下手ですし、演技が得意なわけでもない。緊張しながら面談のワークに臨みました。
「当人の利益」と「支援の継続」を
果たして、演習はとどこおりなく進行。施設側の事情を落ち着いて説明できましたし、相手の話に耳を傾ける余裕もありましたし、前向きな対話に持っていくことができたようにも思います。
“家族側”には終始「身体拘束を受け入れない」との態度を保つように課せられていたのですが、おおむね険悪な雰囲気になることもなく済みました。
無事にクリアできたのは何故か……自分なりに振り返ってみて、気付いたことがあります。
今回の演習のような場面は、初めてではなかったのです。身体拘束への関与が未経験だったせいで、初めてのように思えていただけでした。
利用者さんのご家族に対して理解や協力を求める状況に、私は施設長として何度も直面しています。
例えば「排泄介助がしやすい介護用下着の購入・着用を、利用者さんとご家族にお願いする」。つい先日の出来事です。
上記のような「今まで実施していなかった新しいこと」「当人のプライドや人権に触れること」について理解や協力を求めなければならない時。
私は「当人の利益のため」「これからも支援を続けていくため」という2点をしっかり伝えるよう心がけています。身体拘束でも排泄介助でも、どのような課題であっても、伝えるべきは共通している気がします。
失敗や後悔を繰り返しながら、いつの間にか身に着いていたことですが。
研修で習得できるのであれば、それに越したことはないでしょうね。