天竺堂の本棚小説

ラジオを通じ 交錯する人生 『すべての見えない光』

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『すべての見えない光』

 どこか遠くから電波に乗って飛来する声や音楽を、雑音の中からすくい取るラジオ。ツマミをいじってると、ノイズが突然、耳慣れない異国語の歌に変わってビックリしたりして。このIT社会では古くさいのかも知れないけど、独特な感動を呼び起こす機械でもあると思う。

 そんなラジオでもって、ドラマチックな物語が展開するのが本書。

 第二次世界大戦が迫るヨーロッパに生きる、ドイツの孤児の少年と、フランスの盲目の少女。接点などなかったはずの両者の人生が、砲弾飛び交う激戦の中、ラジオを通じて運命的に交錯する。

 絶妙に緩急の利いた構成も見事だけど、端正にして詩情あふれる文章がまた素晴らしい。
 ドッカンドッカン爆発が起きてるシーンに静謐さが感じられたり、悲劇的な状況の描写に美しさを覚えたり、そんな不思議な読み味。

 読後にはラジオの深夜放送とか聴いてみたくなります♪

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