バートランド・ラッセルの随筆集。
書かれたのは1928~1932年だけど、今読んでもなかなかに刺激的。特に労働についての記述が興味深い。
著者は「幸福と繁栄に到る道は、組織的に仕事を減らしていくにある」として、一日の労働を4時間にしようと提言。これによって、多くの人びとが余暇を享受でき、失業者はいなくなる…今で言うワークシェアリングかな。
科学技術が進歩していけば社会の生産性は上がるから、みんなで短時間労働を分担しても、充分に生活していけるはず。
そんな現実面の理屈だけでなく、反骨の哲学者である著者は、労働を尊いものとして賛美する道徳観念を批判する。
社会の生産性が低かった昔、聖職者や王侯ら特権階級が、農民や奴隷たちから生産物を自発的に差し出させるために考案したのが“勤労の美徳”だと。
生産性が上がってるのに長時間労働がなくならないのは、そんな勤労精神が、私たちに深く根付いてるからだと。
もはや労働は義務化しており、「自分で生産したものに比例して賃金を貰うべきでなく、自分の勤勉によって具体化されるような徳性に比例して賃金を貰うことになっている」と著者。
働くために働くのはおかしいし、“立派で偉い”から賃金が高いというのも実はおかしいのだ。
従来の“労働観”が大きく揺さぶられてしまう。ニートやフリーターの捉え方も変わるぞ。
この他、教育をめぐる言説にも、現代に通じる見識が。
著者によると「教育は、一日、最大限二時間、それ以外の時間は子供と無関係に過ごす人々の手で行われるのがもっともよろしい」。
言説の背景にあるのは「子供に対する望ましい関心は、なんら将来の目的を考えず、子供の前に立つだけで自然に楽しくなる気持ちから出る」という考え。つまりは教師を過労におちいらせず、最良のメンタリティでもって子供たちへ向かわせるための方策らしい。
時間の根拠はテキトーっぽいけど、個人的には労働4時間・学業2時間の社会で全然オッケーです♪