戦争に行ったことはないし、誰かを殺そうとしたこともない。
なので、銃弾飛び交う前線に放り出された新米歩兵の気持ちは分からない。
それでも、戦争について見聞した知識や情報と、自分の経験を基に、想像してみることはできる。
例えばそれは、濁流みたいなものに呑まれ、おぼれまいとジタバタもがいてるようなカンジか? 勇気も機知も消し飛び、恐怖や緊張や焦りで混乱してるようなカンジか?
……そんなことを、本書を読みながら思ったり。
満州の架空都市を舞台にした半世紀にわたる群像劇は、たくさんの読みどころがある。
個人的には、“地図”が象徴する国家や文明よりも、“拳”が象徴する戦争や暴力のほうに、強い印象を受けました。