天竺堂の本棚小説

妖術を“智恵子”で撃破 痛快な伝奇活劇 『怪男児』

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妖術を“智恵子”で撃破 『怪男児』

 夢枕獏の伝奇アクション。
 キャラの立ちまくった“濃い”ヒーローが、悪漢や魔人をやっつけるという、シンプルな物語。個人的に大好き。

 主人公の大学生・出雲あやめは、名前に似合わず冷蔵庫みたいにゴツい、寡黙な巨漢。
 規格外の馬鹿力に恵まれ、スポーツカーをチャリンコで追い回せるほど。半面、ムッツリスケベな純情青年でもあり、高村光太郎『智恵子抄』を耽読し、将来は正統派の少女漫画家を目指してる。

 魔人の妖術を受け、苦しむあやめ。その時、思わず『智恵子抄』の詩を口にしたところ、何故か呪縛が消し飛んでしまったり。
 そんじょそこらの呪いなんか、『智恵子抄』の足元にも及ばないという。ブッ飛んでるけど、妙な説得力があるぞ。

 その他、あやめが大量の朝食をモリモリ平らげるシーンとか、中原中也をそらんじるライバルの出現とか。
 何とも愉快で痛快です。

 あやめのモデルは柔道家・山下泰裕らしい。今の時代なら誰が適役かなぁ?

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