障害者福祉の現場にいると、しばしば無力感や諦念にとらわれることがあります。
支援の努力が実を結ばなかったり、事業計画が規制に阻まれたり…このような時は、見えない“枠”に囲まれている気分になります。
硬直した状況を打破する“枠組み外し”を提唱しているのが本書。
著者は福祉社会学の専門家。ソーシャルワーカーたちへの調査や、自らのダイエット体験などを基に、枠組みからの脱却を提唱しています。
私たちの多くは「何事にも正解がある」「行なうからには正解でなければならない」という考えに縛られています。
そのため、「『出来ない理由を100並べる』人があまりに多い」「『出来る方法を1考える』という柔軟さが不足している」と著者は指摘します。
その時その場をしのぐ「成解」を
地域や現場で私たちが直面する課題は、まさに多種多様です。唯一の「正解」を求めようとすると、かえって解決から遠ざかってしまう場合が少なくありません。
むしろ、常識や正当性にこだわらず、その時その場の課題をしのぐ手段を探す方が建設的。これを著者は「成解」と呼びます。
限定的・局所的な「成解」であっても、集積すればボトムアップし、やがて「正解」として認知されるようになる。これに制度化などが加われば、より良い影響が広範囲にもたらされます。
著者は実例として、障害者施設の改善に始まり、施設解体へと発展していった、ノーマライゼーションの運動などを挙げています。
「成解」が重なって社会変革へと至るまでには、「学びの渦」というプロセスがあるそうです。「そこに関わる人びとが、世界への認識の枠組みを遷移させる学習過程に身を置き続けることを通じて、新たな何かが『創発』されること」と著者は規定しています。
自分の立場や役割から離れたところで、相手・対象との対話を通して学びながら、「では、どうすればよいのか?」と問い続ける…このような地道な行動の先に、「成解」があり、枠組みからの脱却があるのでしょう。