ウチのような福祉作業所では、細かい“創意工夫”が、しばしば必要とされます。
福祉においては個別支援が大原則。支援する利用者さんに合わせて、視認しやすいスケジュール表をデザインしたり、作業空間での目印の位置を変えたり、手仕事を訓練する器具を手作りするなど、ささやかな試行錯誤を繰り返しています。
その際、念頭に置いているのは「素早く行なうこと」「凝りすぎないこと」。
思い立ったことは即座に、作業に手間や費用をかけず、とにかく実行してみるのです。
時間や費用を抑えればコストパフォーマンスが高まるのですが、狙いは別にあります。
“創意工夫”に合わせようとする本末転倒
じっくりと熟考を重ね、手間や費用をふんだんに盛り込んだ“創意工夫”であれば、考案した支援者の心中に“愛着”や“こだわり”が芽生えるでしょう。
すると、その“創意工夫”が利用者さんにとって役立つものでなかった場合、支援者は不満を覚えてしまう。「手塩にかけたからには、失敗にしたくない」との思いが湧くのです。
結果、利用者さんを“創意工夫”の方に無理矢理合わせようとする、本末転倒の事態を招くことにもなりかねません。
手早く手軽に行なったことであれば、それが失敗だったとしても、さほど不満を覚えずに済む。次回の成功を目指し、別のアイデアを手早く手軽に実行するだけです。
これらのことを私は、発達障害者向けの支援器具を手作りする講座で学びました。
講座の冒頭、先生は「たくさん作って、たくさん失敗して下さい。作り込むのは、役立つ物ができてからでも遅くはありません」と言い、私たち参加者を別室に通しました。
そこには、支援器具の材料として、お菓子の空き箱、プラスチックの食品トレイ、空のペットボトル、安価な折り紙や色画用紙などが、ハサミやセロハンテープとともに、大量に用意されていたのです。
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