出入りが激しいと言われる、福祉の業界。
私自身、思いがけない職員の退職に直面し、経営者として人材採用に追われた経験があります。
「あんなに意欲が高かったのに、なぜ…?」「利用者さんみんなから慕われていたのに、なぜ…?」
そのような疑問を抱え込んだことも。
職員の待遇について、あるベテランの企業家が、有名な「マズローの欲求段階説」を用いて説明してくれました。
ちなみに欲求段階説とは、人間の欲求は下から「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「尊厳欲求」「自己実現欲求」の5段階に分かれており、低次の欲求が満たされると高次の欲求が生じる…というもの。
下にある欲求を満たせているか
その企業家によると、経験上、職員が企業・組織に求めることは「生活の安定」「労働環境」「仕事のやりがい」に集約されるそうです。
生活の安定とは、給与や福利厚生のこと。生理的欲求や安全欲求に当たります。
労働環境とは、職場での人間関係や勤務体制のこと。社会的欲求に当たります。
仕事のやりがい、これは字義どおり。尊厳欲求や自己実現欲求に当たります。
「経営者は社員に対し、仕事のやりがいを求めがち」と企業家。「間違いではありませんが、その下にある欲求を満たすことができているのかどうかを、経営する側は考えておかなければなりません」
やりがいだけで成立するもの…それは“趣味”あるいは“ボランティア”でしょう。そこに責任や義務はありません。
職業人としての働きを期待したいのであれば、経営者は、やりがいを支えるしっかりとした“土台”を用意しておかなければならないのです。
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