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弟なりの“自立”を目指して

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弟なりの“自立”を目指して

 ダウン症の実弟が、このほど、実家からグループホームに移りました。
 弟は50歳代、両親は80歳代……離れて暮らし始めるには、これがギリギリのタイミングだったように思えます。

 弟は以前、ウチの施設が運営するグループホームを利用していました。
 ですが、古いアパートを改装した建物なので段差が多いうえ、世話人は夜間常駐していません。加齢による弱体化が進む弟には、暮らしにくくなってしまいました。

 こうして弟は実家暮らしに戻ったのですが、その間にも弱体化は進行。歩行が困難になり、車椅子を使うようになりました。
 在宅介護の利用や、介護用具の導入など、さまざまな福祉サービスを活用してはいるものの、老いた両親には弟の世話が重荷になるばかり。

 そのような時、新しいグループホームが地元にオープンするという情報が、私の耳に入りました。障害程度が比較的重い人たちを対象にしているとのこと。
 弟のニーズに合いそうなことを確認した私は、両親をうながして、そのグループホームの利用申請を進めたのです。

 入居する時、弟も両親も、それぞれに寂しさを見せました。父親は涙ぐんでいたとか。
 ちなみに私は、その場に同行してはいません。後から聞いた話です。

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「気張ってた自分がバカみたい」

 ところが、弟の方は、寂しがったのは最初だけだったようです。わずか数日で、グループホームでの生活に慣れた模様。
 弟は日中、ウチの施設の生活介護を利用しているので、グループホームでの様子を話してくれます。それによると、「ご飯がおいしい」「お風呂が気持ちいい」とのこと。満足そうでした。

 弟はこれまで、ウチのグループホームや、他施設のショートステイサービス、病院へのレスパイト入院などを利用してきました。
 それらの経験が、いつしか弟の中に、親に依存しない精神性を育んでいたのかもしれません。

 しばしば両親は、お菓子の差し入れなどでグループホームを訪れるのですが、弟には実家に帰りたがる素振りはうかがえません。むしろ、「もう帰っていいよ」とでも言わんばかりに、手を振って見せるそうです。
 母親は「これまで『あの子には私がいなきゃ』と気張ってた自分が、何だかバカみたい」。気抜けしたような表情でした。

 弟はグループホームで生活し、平日の昼間はウチの施設にかよいます。月に一度くらいは実家に泊まることもあります。
 当人なりの“自立”を目指し、弟の新たな生活が始まりました。

Armchair Stock photos by Vecteezy

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